星海日記

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強襲揚陸水上艦1
星海雨秋 9384025 2007/02/18 17:22
 その頃、モーリシャス級強襲揚陸水上艦三番艦、LWS-03セイシェルは、エア・クッション式車輌揚陸水上艇、LWB-02フライイング・フィッシュ及び装輪水陸強襲車、WAV-06を密かに送り出していた。
 あくまで敵地上部隊に索敵される危険性のある進路ではあるが、緊急展開軍戦略遠征軍団第一緊急展開師団第一緊急展開連隊第二緊急展開大隊長、オン・カミリョン大佐の失策ではなかった。この作戦は、小さな規模ではあるが、戦術機動軍機動軍団第二機動師団第一機動連隊第二甲兵大隊との明らかな連携の下に実施されていた。
 コマンチェフ曹長は、最新鋭の装軌主戦闘戦車、TBT-05の戦車長として初めての作戦参加で高鳴る胸の鼓動と、自車を運ぶフライイング・フィッシュの揺れとの奇妙な一致を確かに感じ取っていた。
「カズマ一等兵、調子は良いか?」
 独り言の癖は直りそうにないなと、カズマ一等兵は、そう思った。
 カズマ一等兵は人間ではない。生体工学の産物である人型擬似有機体、オーガノイドなのである。だが彼は只の人型擬似有機体ではない。電脳工学を駆使してサイボーグ化されたオーガノイド、つまりサイボーガノイドなのである。
 一般的に人間の一部あるいは多くの器官を人工物に置き換えられた人をサイボーグと呼んでいる。例えば義歯、人工水晶体、心臓の人工弁、人工血管等を置換手術で埋め込まれた人もサイボーグと呼べる。だが、例えば実際に人工弁置換術を受けた人やペイス・メイカを入れている人は、現実世界の日本では一級身体障害者になるのである。サイボーグは決して不死身の英雄ではない。社会的弱者になる場合のほうが多い。
 この仮想世界の物語において、現在は人間の記憶力を増大させる為に簡単にメモリ・チップを埋め込める時代であるから、大半の人はサイボーグと呼べる時代でもある。
 単純に肉体的に強い順は、完全な機械であるロウボット、サイボーガノイド、オーガノイド、人間、サイボーグの順になるであろう。
 サイボーグがいかに機械の腕を装着されたとしても、機械の腕は体内に存在する人工物の為に血液の凝固作用が必ず始まるので、それにより血栓の発生を防ぐ為にワーファリン等の抗血栓剤を死ぬまで毎日飲み続けなければならない。抗血栓剤は血液を固まり難くして逆にさらさらにする為、もしも怪我をして出血したら血が止まり難い為に大変危険である。下手に抜歯でもしようものなら、それだけで大手術と覚悟する必要がある。
 片腕を機械化して強力な力を得たとしても、歯が数本折れて適切な止血が出来なかった場合、そのサイボーグには死が近付くのである。
 だがカズマ一等兵の場合は違っていた。頭脳にはマイクロウチップが埋め込まれ、視覚は紫外線から赤外線までも感知し、聴覚は超音波をも感知し、嗅覚は犬に勝るとも劣らず、額には超音波ソウナーまで埋め込まれている。筋力は標準的人間の三倍で、マン-コンピュータ・インタフェイスで、思考するだけで有線または無線により機械を操作出来るのである。
 彼等は超人であり多額の国家予算を注ぎ込んで配備された、いわば生きている兵装である。出世も格段に早い。一般的な生活においては極めて人間に近い待遇を与えられていた。


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