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金色のサーガ124 美佐 5213649 2015/07/02 19:38 |
正確な軌跡を描いて繰り出した拳は、鈍い音を立てて魔物の顔面にめり込んでいった。 衝撃でよろめいた魔物の足を蹴払い、防がれていた道が漸く開け、駆け出そうとするシールの動きが前方の異変に硬直していった。 シールの双眸に飛び込むダラリと垂れ下がる肢体。 地上から浮き上がった爪先から流れ落ちるどす黒い血液。 擦れた喘ぎ声が生々しくシールの耳に纏わりついてきた。 「カ…ミュ……?」 深紅の双眸がその色を濃く輝かせ、陶酔がちに伏せていた目蓋がゆっくりと上がり、シールを見つめ返しほくそ笑んだ。 カミュを襲った小さな幼体の身体が次第に痩せ干せ、更にその体積を小さなものへと変化させていく。 声にならない驚愕に目を見開いたシールの目前で、灰になっていく様を見せたカミュが、汚れた口元を拭い、静かな声音で囁いた。 「私は魔を生きる糧とする吸血鬼。その事実に背くことは与えられた命を捨てるも同然。シール様、私は生き続けたい」 カミュの強い生命への渇望。 静かに脈動する心音が、新たな力を得て、盛んに体内を巡る。 「行くのか?」 尋ねたシールに頷き、凛とした態度で言った。 「与えられた力を私利私欲に振るうのではありません。魔の非道を食い止めるのも私に与えられた使命かと」 小説ブログランキング http://novel.blogmura.com/ |
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